本当の恋に 気づいた日
~自我~佳奈
「…ふざけないでよ」
自分でも驚くほど低い声が出た。
…美歩の件の時も、ここまででは無かったかも知れない。
あの時は、とにかく激情的になってたから。
今は、違う。……激しくて静かな怒りが脳内を占領している。
「佳奈ちゃん…?」
悠羅さんが驚いている。
…そりゃ驚くだろうね、いきなりこんなに激変したら。
でも、悪いけど、今はこの人を気遣う余裕なんてない。
「…仕方ないって、何ですか?手に入るところにあるのに、何故諦めるんですか?」
「佳奈ちゃ…」
「あたしがどんなに望んでも手に入らないモノを貴方は持っている!…それなのに……何故貴方はそんなに簡単にそれを捨てられるんですか?!」
ああ、視界がぼやけてくる…。
せっかくの紅茶に、涙がこぼれちゃった……。
それでもまだ、この人に言いたい。
「……貴方は本当に彼が好きなんですか?……本当に好きなら、駆け落ちでも何でもすればいいじゃないですか!……それとも、その気持ちは嘘なんですかっ?!…貴方は……」
…貴方は、ずるい。
そう言いたかったのに、言えなかった。
悠羅さんが、泣いてたから。
「……分かってる、分かってるよ。…このままだったら、ダメだって……でも、怖いの。……もし私達がなんらかのアクションを起こして、認めさせようとしたら…逆にもっと引き離されるかも知れない。結婚を早めさせられて、会えなくなるかも知れない。……とりあえず、今の状態を維持すれば、華音の側にはいられる。……わざわざ、自分からアクションを起こして自滅したくない。………一歩が、踏み出せない。…彼と一緒に戦って行きたいって……私だって思ってるけど…っ」