本当の恋に 気づいた日
「っていうか今、アンタのその顔、すっごく醜い」
「ッうるさいうるさい!!黙れぇぇえええええ!」
「驚愕、恐怖、それから焦燥、困惑に、劣等感。そんな負の感情に蝕まれた、歪んだ醜い顔してる」
人間の大多数は、自分が得意、または絶対的な自信を持っている分野において他人にそれを否定されると、すごくショックを受ける。
美歩の場合は、顔。
確かに可愛い。でも今は、可愛いけど、醜い。
「黙れえええぇぇええええええええぇえっ!!!!」
「ほら、化けの皮が剥がれた。いっつも媚びた気持ち悪い猫なで声ばっかり出してるけど、本性はこれじゃん」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい……!!!!!」
「ほら、さっさと自分の部屋に帰って寝なよ。その醜い顔、いつまでもあたしの目の前に晒さないで?」
カシャッ。
あたしは携帯のカメラで美歩の顔を撮った。
「それとも、この負の感情と涙と汗まみれの汚い顔を、アンタの言う、『だぁいすきな風雅くぅん』に送って欲しい?」
「いやぁっ……!やめてぇええええぇ!!」
「自分の部屋に帰る?」
「…帰る…帰るからぁっ…」
「あっそう、残念。まぁ、この写真は保存しておくから。せいぜい良い夢を見なさいね。お休み」
背中を丸めた情けない姿の美歩を見ながら、『あたしって結構Sなのかな~』と、心の隅で密かに思った。