本当の恋に 気づいた日
「だから、俺は、佳奈を利用してる」
「……っ…」
自覚があるなら、どうして止めないんだよ…。
その「利用している」期間が長ければ長いほどアイツは傷つく。
「どうしようもできない現状を打破したくて、彼女を利用してるんだ。…悠羅が俺に恋人ができたって聞いたら……万が一、万が一でも嫉妬とかしてくれて、やっぱり認めさせるために頑張ろうって言ってくれたらって…っ……」
「…兄貴……でも…」
「分かってるっ!…俺がしていることはただの卑怯な事だって…。それでも、俺は悠羅が好きなんだ。支えたいんだ。いつか…俺に、偽りじゃない笑顔を見せて欲しい…だから……」
途中で絶句し、そのまま兄貴は黙りこくった。
俺は少し逡巡し、そして思っていたことを口に出した。
「…笑顔を見せて欲しいのは、俺も同じだ。好きなヤツが傷ついて泣いているのは見たくない。兄貴がしてる行為は、結果的にアイツを傷つけるだけだ。……そんなのは、許せない。……アイツを…斉藤佳奈という人を、傷つけることは、たとえ兄貴でも、許せない」
そう、許せないんだ。
好きなヤツを傷つけられて、黙ってなんていられない。