本当の恋に 気づいた日

ドンッ!

ガシャン!



「痛っ…」


ぼーっと自転車をこいでいたら、誰かにぶつかってしまった。



「ごめんなさい!」


慌てて謝ったけれど、相手はまじまじとあたしの顔を見ていた。



「あの…?」



「ああ、何でもない。ごめんなさいね」



…よく見たら、この人すごい美人だなぁ…。


って、この人、血が出てる!


「…あ、膝、怪我してます!……ちょっと待ってください、応急処置しますから!」



「え…ああ、気にしなくても良いのに。…ありがとう」


そう言われてあたしがカバンから絆創膏と消毒薬を取り出して彼女に近づいたとき…



ふわっ




……え?


この香り……、部長?!



……あたしの鼻がとらえた香りは、確かに部長の香りだった。


部長はいつも、良い香りのトワレをつけているから分かる。


昔、それについて聞いたとき、


『ああ、これは、世界で1つだけ、俺だけのトワレなんだ。特注品だってさ。いろいろあって、コレはずっと身につけておきたいんだ』


と答えられた。


世界で1つだけ、部長だけの香りを、何故この人はまとっているの?



「…どうかしたの?」



「いえ……あの、その香り…」



「…ああ、コレ?…フフ、良い香りでしょう?世界で1つだけなのよ?」



…部長と同じ事言ってる…。


…この人、何?!



「ねえ、貴方、華音と風雅クンの知り合いでしょ?」


……え?!
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