本当の恋に 気づいた日

「私の行きつけの店があるんだけど、そこで良いかしら?」




そう言って悠羅さんが案内してくれたのは、格調高そうな店で、たくさんの高級車の隅に邪魔にならないように止めたあたしの自転車が、妙に貧相に見えた。



「いらっしゃいませ、榊様」


あたし達が店に入ると、店員がたくさん寄ってきて、悠羅さんに礼をした。


店の中はとても広く、キレイで、高級そうだった。


「いつもの席、空いてます?」



「もちろんでございます。榊様、お荷物とお上着、お預かりいたします」



「お願いしますね」


悠羅さんは上着を脱ぎ、荷物とともに店員に渡した。


それだけの動作だったのに、その動きがやけに優雅で美しかった。



「お連れ様もどうぞ、お預かりいたします」



店のすごさに圧倒されながら、あたしもとりあえずブレザーを脱ぎ、スクールバッグと一緒に渡した。


端から見ても美しくはない所作だったと思う。


あたしは……この人に…悠羅さんに敵うわけ無いなぁ、だから部長も……と思って、思わず唇をかんでしまった。



そしてあたし達は奥の個室になっている部屋に案内された。



……VIPルームってヤツ…?!



「こちら、メニューになります。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」



「ええ、ありがとうございます」



「それでは、失礼いたします」


そう言って、店員は恭しく礼をして、ドアを閉めて出て行った。



「…そうねえ…何にしようかな……あ、佳奈ちゃん、メニューどうぞ」



悠羅さんが渡してくれたメニューを見て、あたしは思わず声を上げそうになった。



(高っ……!!)



ほとんどのモノが5000円以上。高いモノはもう10000円なんてとっくに超えている。



あたし、今日の所持金、いくらだっけ……


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