茜空
しばらくして、予鈴が鳴った。
「はい、おはよー。皆席に座れー」
担任の声が聞こえ、
皆しぶしぶ席に着く。
どうでもいい報告が長く続いた後、
担任の声が響く。
「えー、今日、美波が倒れた。」
.....は?
教室がざわめく。
何それ。
聞いてないんだけど。
確かにまだ美波の席は空で。
「まぁただの貧血らしいから、大丈夫だろう。今も保健室で休んでるから
心配はするな。」
安堵の声が聞こえ、あたしも無意識にギュッと制服のスカートを握りしめていた手の力を抜いた。
なぁーんだ、
大丈夫なんだ。
美波は昔から貧血がひどかったけど、
そんなことずっと忘れていた。
ふと美波の隣の席に座る桐田君を見てみたら、
彼は美波の机を静かに見つめていた。
前髪が長くて
どういう表情をしているのかはわからないけど、
背中を丸めて美波の机をジッと見ている桐田君の顔は、
...少し寂しそうだった。
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