茜空
「明日学校に転校生が来るんだってよ!」
美波が明るい声でカレーを頬張りながら言う。
へー。
あんまり興味ないし。
お母さんが麦茶を飲んでから言う
「そうなの~?女の子かしら?」
「うーん、まだわかんない!」
ニコニコしながら美波が言う。
「そう!楽しみねー!ね、美晴。」
お母さんが笑って言う。
「あー、うん。そうだね。」
適当に反応する。
「男だったらとにかく関わるんじゃないのよ。」
お母さんが低い声で言う。
いつもこういうことを母が言うと、
空気が凍る。
あたしは隣に座るお母さんの顔をちらちらと伺う。
美波もさっきまでカレーを食べていたのに今は停止して
こっそりとお母さんの顔色を伺っているのがわかる。
お母さんはそのまま視点があっていないかんじに宙を見ている。
お母さんは昔男に何かされたんだとあたしは思う。
っていうか、何もされたことないのにあんな狂ったかんじになられたら
それこそホラーだし。
多分離婚した父と何か関係あるんだと思う。
父とは会ったことないんだけど、
父のせいでお母さんが鬱病になったのはまちがいないし。
お母さんはカレーが少し残ったままのお皿を片づけ、
いつもの様に
医者に出された精神安定剤の薬を水と一緒に飲む。