茜空


美波がびくっと体を震わせたのが見えた。

お母さんが男とは関わるなと言ったのを覚えていたのだろう。
少し困った様に目を泳がせている。


その男の子は下を向いたまま、早足で美波の隣の席に座った。

美波が彼に向って少し困った様な笑みをうかべてちいさく会釈したが、
彼は何も反応を示さなかった。


「えーと、彼は桐田千秋君。家庭の理由で大阪から引っ越してきたらしい。
皆仲良くしてな。桐田も皆に何かわからないことがあったら聞け。
隣の席の野々原も仲良くしてやれ。」

.....はい、と美波が小さく言う。

「じゃあ今日の朝礼は少し長引いたが、
そろそろ授業始めるぞ!」



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