君が教えてくれたこと。
「ひぇ〜怖い話ですねぇっ…」


すると後ろから、バイト仲間の後輩の星見由実(ホシミ・ユミ)の声がして、私達は振り返る。


「由実ちゃん、おはよう」


「何だよ〜盗み聞きかよっ…趣味悪いな」

淳子が、ケケケッと笑いながら由美をからかうのは日常茶飯事。


「琉菜先輩、敦子先輩、おはようございます。盗み聞きじゃないですよ。偶然に聞こえて来ただけです」


ムッとした表情で腕組みをして、由美は淳子に睨み付けている。


「いいのよ、由美ちゃん」

私が優しくニコリと微笑みかけると、コロッと態度を変える。


「はい♪…琉菜先輩、優しい〜///」



「たくっ、琉菜は甘いんだから〜」



「いいじゃない、隠すつもりも無かったし」


【ーーピロリン、ピロリン】

店内に、人が入って来るのを知らせる音が聞こえて来た。


「あ、お客様だ…私いってきますね♪」
由実は、サッ…と注文表と氷を入れたお水を持って行く。



すぐに由実は戻って来たが、何だか浮かない顔をしている。


「なしたー?何か嫌なこと言われたか?」
敦子が由実の傍へと行き、ポンポンと頭を撫でた。


こう言う時は、淳子は優しい。


「違います…あのお客様、様子が変なのです…」


「変って何が?」
敦子が聞き返すと、由実は俯いたまま口を開く。


「…注文も頼まずに、いきなり『琉菜、居るんだろ?琉菜を呼んでくれ……』って言い出したんですぅ…何だか気持ち悪くて」


そう言って、チラリとお客様の居る方を見つめたので、私達も由実の見た方向へと目を向けた。

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