ハツコイ
はじまり
あれは入学式の時。
夜から緊張して眠れなかった私、吉永紗由は
めずらしく寝坊をして
遅刻ギリギリで学校の門に着き、
体育館の場所が分からず半泣き状態。
ついには泣き出してしまった。
そんな時、
急に目の前に青いタオルが。
「どした?新入生か?」
声がしたので顔を見上げると、柔道着を着ている男の人が立っていた。
「今タオルしか持ってねぇけど」
そう言って差し出してきたタオルを受け取ると、
彼は少し微笑んで、
「体育館はこっち」
と言って体育館までわざわざ私を連れて行ってくれた。
なんとか入学式に間に合ったのは彼のおかげ。
入学式に出てないって事は、
2年か3年の先輩なんだろうな。
入学式が終わって
お礼を言いに彼を探したが、
もうどこにもいなかった。
手がかりは柔道着を着ていたって事と、
この青いタオル。
渡された青いタオルは
使い回しているせいか
ボロボロだった。