ハツコイ
たまらなく不安で
それ以上聞きたくなくて

私はその場から走り去った

「紗由ちゃん!?」


大地先輩の声は
私には届かなかった


**********


「健人…ちょっといい?」


肝試しが終わった後
私は健人を呼び出した


「あぁ」


砂浜まで移動して人気がないのを確認する。


「部屋…戻らなくていいのか?吉永、心配してんじゃ…」


「ねえ健人…」


私は健人の言葉を遮った

「え?」

私は健人に近づく


「紗由ちゃんの事…気に入ってるの?健人、今まで女子とあまり話さなかったじゃない。ましてや手を繋いだりなんて…」

「吉永はマネージャーだし、頑張ってくれてるからな…他のやつらとは違う」


他のやつらとは違う…?それって…


「じゃあ…私は!?」


「お前もマネージャーだろ?吉永と一緒だ」


紗由ちゃんと一緒…?

私は健人とずっと一緒にいたのに
急に現れた紗由ちゃんと…?


確かに紗由ちゃんは
私の大事な後輩

マネージャーの仕事も頑張ってくれてるし…


けど…誰かと一緒の立場なんていらない

辛くなるだけだよ…


私は息を整える
そして顔をあげて


「好き!」


たった一言だけど、私にとってはとても大きな一言。


「え?」


健人は困ってた
困らせるつもりはなかった。


部活引退するまで自分の気持ちを言うつもりはなかった


だけど我慢できなかった

紗由ちゃんと健人が…
手を繋いでるところを見て。
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