儚花火
「獅兎に……ですか?いるわけないですよ」

言って、その人はクスクス笑った。

「……?」

「実は私、今度結婚するんです」

「えっ、そうだったの!?じゃぁ今度お祝いしなきゃ!!」

急に告白された衝撃の事実に声をあげたらまた笑われた。

「この鈴はその人との約束の証なんです。私たちの家の者はほとんどがこの鈴をくれた者に従うんですよ」

「約束…?」

「はい。ですから祈雨さまも、獅兎に……いえ。何でもありません」

「?」

何か言いかけて、優しく笑ってその人はあたしから離れて行った。
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