儚花火
「………好きだよ…」

獅兎の言葉は、花火の音がかき消した。

さっきまで綺麗だと思ってた花火が恨めしくなった。

でも、それでもあたしには聞こえた。

その唇の動きだけで充分だもん。

いつも余裕たっぷりな獅兎のちょっと言いにくそうな声。

「ねぇ…、それってあたしを……だよね??」

他の誰かのことなんて言われてたら、それこそ立ち直れないもん。

「悪い」

その言葉は、獅兎の腕の中で聞いた。

……さっきと同じシチュエーション…。

嬉しいけど……何で謝るの?

好きなのはあたしじゃないってこと…?

謝罪の意味がわからなくてあたしが顔を上げると、獅兎は困ったように笑って。

口を開いた。

「お前のこと諦められそうにねぇ」

「っ……」

「祈雨っ?」

雨も降ってないのに、獅兎の浴衣に雫が落ちる。


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