なんでも屋 神…第二幕
「だから当時は私も意地になってね、私の前じゃ気許せないのかって、此処の親父さんに、ペペロンチーノの作り方を教わったの…私にだって、そんな可愛らしい時が有ったのよ。」



胸を張ってそう言ったマコさんは、仄かに頬を赤く染めていた。



前に神君と此処に来た時も、神君はメニューも見ずにペペロンチーノを頼んでいたっけ。



「…初めて会ったくせに、分かったような口利いて悪いんだけど、一葉ちゃんさ…何処か無理してない?私がそうだったからなんだけど…違ってたらごめんね。」



…私は両手に握っていた銀色のスプーンとフォークを、いつの間にかテーブルの上に落とし、溢れてくる涙を抑えきれなかった…。



裏の仕事に身を投じる神君を…私は不安で見ていられない。



何時の日か、神君も松さんのようになってしまわないか…。



そしてそれとは関係無く、神君と一緒に居ると、見えない重圧が私を押し潰してしまいそうになる。



常に大人な神君に対して、世間知らずで子供な自分。



不釣り合いだよね…でも、神君は優しいから私を傷付けたりはしない。



全ては、神君を完全に信じる事が出来ない…私の弱くて脆い心が悪いの…。



ごめんね神君…本当にこんな私で神君は良いのかな。
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