なんでも屋 神…第二幕
己の腑甲斐無さに苛立ちを押さえきれず、玉砂利を大きく蹴飛ばしたノリは、足早に運転席に乗り込んだ。



兄ぃを後部座席に横たわらせ、止め処なく流れ出る血の出所を探す。



その間にも、麻の白いシャツに赤黒い血液は染み込んでいく…。



腹部からの出血に気付き、その上から覆うように手を当てる。



この世界に取り残されたのか、それともこの世界で活動する事を許されたのはこの三人だけなのか、今は全ての風景が止まって見えた。



此処は間違い無く現実世界なのだと気付かせてくれるのは、唸るエンジン音と、ひっきり無しにノリが響かせるクラクションと怒声…。



「…辰徳…俺に構わず…奴を追え。」



青息吐息で捻り出した兄ぃの言葉…息も絶え絶えのくせに…。



瞬間、俺の身体は耳まで火が灯ったように熱くなった。
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