なんでも屋 神…第二幕
第八章
「何じゃ、珍しい患者じゃの。黒沢か…ふん、あの小僧っ子が命を狙われるまでに成ったか。」




怒の感情しか映さないノリの瞳は、眼前で兄ぃの容態を眺める谷口の爺に張り付いていた。



爺が何かつまらない事を言ったら、迷わず噛み殺すだろう獣の眼差し…。



「御託はもう良い。兄ぃを殺したら、俺が爺を殺すぞ。」



俺の冷言を受け、不満そうに鼻を鳴らしながら診療室に消えて行く爺。



長年ヤクザと渡り合っているだけに、俺の言葉でたじろぐ爺では無いと承知済みだ。



だが、俺との付き合いの深さから、その言葉を信じれぬ程愚かでも無いだろう…事実、脅しやハッタリで言ったつもりも毛頭無い。



水を打ったように静まり返る待合室。目の前の硝子戸越しに聞こえてくる金属の衝突音。



気持ちの中では焦燥感に苛まれながらも、今は此処で祈るしか…。
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