なんでも屋 神…第二幕
恰幅の良い社長に、窓拭きの依頼が終わった事を告げ、僅かな謝礼金を手にした俺は[渡辺商事]を後にした。



冷ややかな視線と、冷笑が混じり合ったオフィス内で働いた為か、汗一つ掻く事も無く、当分の間はこの近辺を彷徨くのを止めようと固く心に誓う。



外は夕暮れ時となり、そんな事を思いながらマジェスティに跨ると、例の地下駐車場から黒いデリカが姿を現した。



ゆっくりとその巨体を揺らしながら、歩道を突っ切って道路に出たデリカは、来た道と同じ方向に消えて行く。



俺は瞬時にそのナンバープレートを暗記し、脳内に書き留めた。



暗記は得意だが、追いかけるべきか否か…。



ノリとマコを待たせている事も有り、今日の所は諦める事にした。




この時の判断が、後に災いを齎そう(もたらそう)とは、この時考えもしていなかった…。
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