なんでも屋 神…第二幕
無人の装いを保つ家を出ると、朝靄が当たりを薄く包んでいたが、それも顔を出し始めた朝日に溶かされようとしていた。



それから俺とノリは一端家に戻り、夜まで時間を潰した。



気付けば、数時間ばかり浅い眠りに落ちていたらしい。



夢の中で、微かに真美の幻影を見たような気がしたが、窓の外から見える叢雲に瞳の先を奪われてしまった。



濃い水色の海に浮かぶ、純白の叢雲…何も景色が綺麗な観光スポットや田舎に行かなくとも、それだけで幻想的に映る。



一頻りゆっくりと流れる雲に見入っていた。



それは心にこびり付いた汚れを落とすかのように、素の自分に戻る儀式のように…。



夕焼けも通り過ぎ、暗闇が世間を支配する時間の始まり。



東の空には、春の夜を象徴する朧月…ダイヤモンドを散りばめたような星達。



総仕上げの時間が、始まろうとしている。
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