なんでも屋 神…第二幕
俺が下を向いて立ち上がろうとした時、ジャズが緩く流れる[トレイン]の店内に、乾いた肌と肌がぶつかる音が響いた。



それは音量に表せば微量なものだが、心に響く力強い音だった。



視線を前に移せば、娘が左頬を押さえて半田さんを見つめている。



「…弥生、泰造さんに謝りなさい。あんた達に分からない事が、二人の昔には有ったのよ…。」



此処で俺が顔を出すのは得策では無いが、[トレイン]の貸し切り時間も迫っているので仕方無い。



「すいません。時間も迫っていますので、後は事務所の方に移って話しを進めます。三人は公園で待機していて下さい。」


大さんを立ち上がらせて、息子と娘を連れて事務所へ向かうが、[トレイン]を出た時に見た、落ち込む大さんの肩にそっと腕を回して歩く、古川さんの姿が瞼に焼き付いたままだった…。
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