告白
俺は産まれるのを望まれない子供だったのか。


中絶。


俺は中絶を家族に望まれた子供。


体が重かった。


体を引きずるように両親を探した。


否定して欲しかった。


『違う』と。




『お願いよ。
私を家に戻して。』


母の声が聞こえた。


『だめだ。』


父の声も。


『幸治の側にいさせて。』


『だめだ。
この間も熱を出したばっかりじゃないか。』


『ただ風邪ひいただけよ。』


『君はそれが命に関わるんだ。
分かってるだろう?
頼むから、体を大切にしてくれ。』


『おとなしく家にいるから。
だってあなた幸治だけ別荘に連れてきてくれないじゃない。』


『あの子はだめだ。』


『どうして?
幸治も私たちの愛しい子供よ。』


『あの子を見ると思い出してしまうんだ。
君を失うと思った日を。
医者に言われた『覚悟してくれ』と言われた言葉を。
あんな辛い思いはたくさんだ。』


『それは幸治のせいじゃないわ。
私が産むと決めたから。
命を失っても、産みたかったから。
それは大好きなあなたの子供だから。』


『子供はいらなかった。』

父の言葉が、胸に刺さった。
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