かたつむりの恋心
〝僕は反応が遅い。

だからどうしても、人との会話がスムーズにできない。

なにも思っていないわけじゃない。むしろその逆。

だけど、僕はなにもかも遅いから。

話し相手とも温度差ができる。

それは相手のせいじゃない。

だから、つらい。〟


突然、ぼたっと水を落としそうになって、ノートを汚しては大変と慌てて受け止める。

それが自分の涙だったことに気付いても、「あー、泣いてるなあ……」と思うぐらいで、内心で激しいぐらいに考えていることと、現実とがうまく噛み合わない。

(私は自分の中にさえ温度差があるんだろうか)

ナツメのフッという小さな笑いは、授業の声と、雨音に紛れていった。

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