かたつむりの恋心
“わたしもです”

悩んで悩んで、たったひとこと書けたところでナツメは脱力した。

そのあと、力を振り絞って(いきなりごめんなさい。鉛筆で書くので、消してください。)と追伸をつけた。

本文より括弧の中身のほうが多いってどうよと自分でも思ったが、小学校の「あのね」で躓いた自分にはこれ以上は無理だと判断して、ノートを図書室に返しに行った。

放課後の図書室は図書委員が一人いるだけで、簡単に返すことができた。

ナツメはそのノートを、もとあった辞書に夾んだ。

このノートの持ち主は、私の書いた文(といえるほど多くないけれど)を読んでくれるだろうか。

もし読んでしまったら、どう思うだろうか。

図書室の出口まで来て、今日家で読む本を借りていないことを思いだし、本棚の中へ引き返そうとしたとき……

カウンターに置いてある図書カードが目に留まった。
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