赤い愉楽
しかし気まぐれな神は
慈悲という言葉を忘れたかのように


この空間に冷たい風を
送り込んでいる。


注射針を怜奈の腕に近づける奥田。



怜奈は奥田から目をそらさない。



何かを悟ったような穏やかな表情の怜奈は
窓に顔を向ける。


しかし窓には厚いカーテンが
掛かっており


外の様子が見えないでいた。


「奥田さん。最後のお願い聞いてくれる?」


奥田は無言のまま。


「窓の外がみたい。
夜の星を最後に観ておきたいの。


だって…」


怜奈は柱に縛られた無残な姿のまま
毅然と言い放った。



「私達の幸せを奪った人間の
顔を見ながら死にたくないの」




奥田は注射針を怜奈の腕に突き立ててた。









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