赤い愉楽
無理もない。


その貯金通帳には
怜奈が見たこともないような金額が書かれていたのだから。



「一億円あります」


さも当然のように言う男。


「私が死んでも怜奈が生活に困らないよう
これを渡してくれ。

そして私を忘れ
平穏な人生を送ってくれ…


そう怜奈に伝言してくれと
私は頼まれたのです。


私の用事はこれだけですので
失礼します」



席を立つ男。


その後ろ姿を怜奈は思わず呼び止める。
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