赤い愉楽
男は怜奈をじっと見る。


「ご主人は…何者かに追われているような様子でした。

そしてある時私にこの預金通帳を託し
何かあればこれを怜奈に渡してくれと伝言されたのです」


その時平野がうすら笑いを浮かべた。


「怜奈さん…ご主人は宝くじにでも
当たったんでしょうかねえ?

私共もそのお話をお聞きしまして
少し調べさしてもらったのですが…」


平野は身を乗り出し怜奈に囁くように言う。


「出所がさっぱり分からないんですよ。
奥さん?何かご主人から聞いていませんか?」


明らかに疑いの目を向ける平野。


嫌悪感のする平野の視線から
思わず目をそらす怜奈。
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