赤い愉楽
2人は一礼をして
平野のオフィスを後にする。


平野はその姿を見届けた後
後ろに立つ筋肉マンに目配せをする。


「横田君。後は頼みましたよ」


横田と呼ばれた大柄な男は
一礼をして部屋を飛び出していった。


平野はため息をついたあと
ピースを取り出して口にくわえ

一言つぶやいた。


「全てはシナリオ通りだな…


後はワタヌキがどう動くかだが…」



中村巡査が耐えかねたように立ち上がり
ラジオをFMにチューニングする。


すると部屋中に響き渡る
ポップスソングの音色。


そして混沌としたこの事件の中
怜奈たちを覆う空だけは綺麗に澄み渡っていた。

遠くで鳥の鳴く声が聞こえた。






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