赤い愉楽
怜奈の膝の上には
茶色い紙袋が一つ。


怜奈は紙袋を愛おしそうに見つめる。


紙袋を覗き込む怜奈。


黒い手帳。


腕時計。


文庫本。


思わず顔を伏せる怜奈。


全ての物に思い出がある。


この黒い手帳は背広のポケットに入っていた。

腕時計はいつも左手に光っていて
読書好きの夫はいつも本を読んでいた。


返還された遺品を手に
思い出に浸る怜奈。
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