茜ヶ久保マリネの若気の至り
絶対恭順?

馬鹿な。

私は吐き捨てるように口にしようとしたその言葉を飲み込んだ。

確かにそんな盟約は存在した。

だがそれは、リヴァイアサンと人魚族が志を共にしていた頃の話だ。

今のリヴァイアサンは違う。

他の一族と共存共栄しようなどという考えは、とうの昔に捨て去ってしまったらしい。

『サハギンは己の欲望にのみ忠実』

誰あろうリヴァイアサンが言っていた言葉だが、そんな下衆な輩達と、非公式とはいえ手を組んでいる自体が、共存共栄など頭の片隅にもないという証拠ではないか。

「マリネ様は」

侍女は、私とは違う人魚態の姿のまま、二足で立ち上がった私を見上げる。

「人魚の身でありながら、リヴァイアサンに勝てるとお思いなのですか?」

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