茜ヶ久保マリネの若気の至り
そんな時だからこそ、私は蜃気楼でも見たのかと思ったのだ。

…島があった。

木も草も生えていない、白い砂浜だけの島。

私は目を凝らし、もう一度確認する。

「…本当に、島がある」

知らなかった。

この近海に長く住んでいるというのに、こんな場所に小島がある事自体初めて知った。

この時間は干潮だ。

恐らくあの島は、満潮の時には海に没してしまうのだろう。

だから普段はその存在に誰も気づく事なく、こうして私のように偶然そばを通りかかった者だけが、その存在を知るのだ。

私は泳いでその島へと近づいていく。

近くに行って初めて分かった。

砂浜だけの島かと思っていたが、この島には家があった。

勿論満潮の時には海に沈んでしまう島だ。

家といっても最早廃墟。

石造りで辛うじて流されずに済んでいるような、残骸だらけ、フジツボだらけの家だった。

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