茜ヶ久保マリネの若気の至り
血に濡れた人魚の女王
満月の夜だった。

波の音だけが静かに聞こえる天空宮の波止場。

こんな時間、こんな場所を歩いているのは私しかいない。

そしてこんな時間、こんな場所を歩いている私に、好都合とばかりににじり寄ってくる男が複数…。

「あら…」

ブラックレザーのボディスーツ。

そこから覗く豊満な胸元を見せ付けるように、私は腕を組んで薄く笑いかけてやった。

「それ変装のつもり?お粗末な皮を被っても、磯臭い体臭がプンプン臭ってくるわよ?」

もとよりここら一帯は『彼ら』の縄張りだ。

変装などしなくても、ここで襲われたら『彼ら』以外に犯人は有り得なかった。

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