茜ヶ久保マリネの若気の至り
しかし。

私は砂漠にオアシスを見つけたかのような気分になる。

家があった。

小さいとはいえ、孤島があった。

荒れ放題の廃墟ではあるが、片付ければまだ何とか住めそうな雰囲気だ。

海に没してしまう事さえ、人魚の私にとっては問題ですらない。

何とか野垂れ死ぬ事だけは免れそうか。

ヘナヘナと力が抜け、その場に座り込んでしまった。

…ここが後の『茜ヶ久保マリネの屋敷』となる家。

私が500年間たった一人で住まう事になる、海中に姿を消す不思議な屋敷の始まりであった。

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