茜ヶ久保マリネの若気の至り
正直後悔の極み。

静寂に包まれたベッドの中で、唇を噛む。

…そんな静寂の中だからこそ気づいたのだろう。

「…?」

声が聞こえた。

この家の中ではない。

遠く。

海を隔てた遠く。

人魚の聴覚は人間のそれとは出来が違う。

聞こえるのは、遠く離れた位置から。

大勢が、大勢に襲われる悲鳴。

阿鼻叫喚。

この方向、この距離…。

「っ!」

私はベッドから飛び起きた。

「人魚の洞窟か!」

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