茜ヶ久保マリネの若気の至り
黒幕
水滴の滴る音が響く。

暗く、ジメジメした鉄格子の中。

両手を繋いだ天井からの鎖のせいで、肩が酷く痛んだ。

…何も身につけていない。

上半身は裸、下半身は人魚本来の姿。

不衛生な牢屋に閉じ込められ、かれこれ一時間は経過していた。

「いつまでこんな所に放置しておくつもり?私は客よ」

拘束されたまま、気丈に振る舞う。

しかし、窮地なのには違いなかった。

…何度も試してみたのだが、海刀神が顕現できない。

両手を繋ぐこの鎖のせいなのか、それともこの牢屋そのものの効果なのか。

どうやら魔法を無効化する効果があるらしい。

この中では、私は非力な只の人魚に過ぎなかった。

< 61 / 101 >

この作品をシェア

pagetop