茜ヶ久保マリネの若気の至り
サハギン達の見ている前で、私は左手を振り上げる。

直後。

「!お、おい!」

一匹のサハギンがその異変に気づいた。

今の時間は満潮。

波止場ギリギリにまで、海の水が押し寄せている時間帯だ。

だというのに、見る見るうちにその海水が引いていく。

干潮の時間にはまだ数時間はある。

それに引き潮としては速度が速すぎる。

こんな急激な引き潮など、自然現象では有り得ない。

まるで海の水が、どこかへ吸い上げられているかのようだった。

…そう、吸い上げられたのだ。

サハギン達が気をとられていたほんの数秒の間に、私の左手には一振りの刀剣が握られていた。

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