茜ヶ久保マリネの若気の至り
愕然とするしかない。

如何に強大な魔力を持つ私とはいえ、クラーケンはあまりにも巨大すぎる。

たかが人魚一人で、どうやって島ほどもある化け物に立ち向かえというのか。

「おとしなく食われていた方が…賢明だったな…」

粘液に塗れた体表をテカテカと光らせて、クラーケンの赤い眼が不気味に輝く。

その時だった。

「!!」

私の背後で、クラーケンが出現した時と同様の海面の隆起。

クラーケンのものよりは小さな隆起だったものの、水柱を伴って現れたのは、百メートルはあろうかという海竜だった。

「…あ…」

白い鱗に、鬣のような首周りの体毛。

蒼い瞳を持つその海竜の頭部にある、一対の頭角には見覚えがあった。

「リヴァイアサン!」

「やれやれ…奴が本性を現したなら、僕も応えないとね」

リヴァイアサンは体を屈めて、私を自らの頭部へと乗せる。

「行くよマリネ。ここで全ての決着をつけよう」

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