茜ヶ久保マリネの若気の至り
飾り気のない黒い鞘。

一般的な拵えしか施されていない柄。

しかし、その柄を右手で握って抜刀すると。

「っ……!」

サハギン達が息を飲むほど、禍々しい魔力が刀身から迸った。

感じられる威圧感は、泳ぎに長けた海の魔物さえ流れに飲まれるほどに荒れ狂った、嵐の夜の海のそれ。

この刀剣は武器ではない。

海そのものを押し固めて刃の形にした『魔法』なのだ。

「まさかそれは…魔刀『海刀神(みとがみ)』…じゃあてめぇはまさか!」

「魚にしては物知りじゃないの」

握り締めた魔刀・海刀神の切っ先を向けて、私は名乗りを上げる。

「天空宮の人魚の女王、茜ヶ久保マリネよ。斬り散らしてあげるわ、下衆なサハギンども!」

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