poco a poco~少しずつ~another side 【短編】
あたしに見つからないようにしてるって事は




音楽室にきていることを隠したいってことだよね…?





このことは触れない方がいいのかな…と思ったけど





やっぱり気になる。





だから、勇気を出して聞いてみた。




「いつも音楽室のドアの前で聞いてるよね?」



彼はちょっと戸惑いの表情を浮かべた後、言った。


「…ごめん」


謝られるとは思っていなかった。



それにあたしは別にピアノを聞かれるのが嫌なんじゃないし。



ただあんなところに立っていられたら妙に気になるだけ…。



「ううん、謝らなくていいよ。でも、次からはちゃんと中に入って聞いてくれない?」



まだ中に入って聞いていてくれた方がましだ。


「え?」


聞き返した彼にあたしはこう言った。



「ドアの外にいられると集中できないから」




彼は一瞬呆然とした後に



にこりと微笑んだ。


その笑顔に…危うくちょっと見とれてしまった。
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