貴方が好きなの

今いるのは三階。


「……一通り見たから帰ろっか」


「そうだな…」


「あぁ、帰れ、帰れ。……正門まで、送ってやる。それとも、家まで車で送ってやろうか?もう暗いし、遠いだろ?」


「いいんですか?」


「優しいだろ?…これからは藤本大先生って呼んでもいいぞー」


「遠慮します」


「黒川は冷たいなぁ」




現在5時30分。
先生の車までやってきた。

「2人とも後ろに乗ってくれ」


「はぁい。…ホントありがとうございます」


そう言いながら先生のカッコイイ、トヨタの車の後部座席に乗り込む。



「そういえば、冬夜君の家はどこなんだ?」


「あぁ、言ってませんでしたね。…藍の家の隣です。関係ない俺まで、送ってもらっていいんですか?」


「構わない、構わない。気にするな。……そうか。黒川の家の隣かぁ。…よかったな、黒川!」


そう言って車のエンジンをかけて、正門を滑らかに出ていく。



「何がですか?」


「これからは、寂しく独りで帰らなくて済むんだぞ?」


「……そうですねぇ」



………沈黙。



もっと気の利いた返事をしたら良かったって今更ながら後悔。






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