記憶 ―惑星の黙示録―
「…何かが、飛んで来るの…。何だろう…」
何かは未だ分からない。
その羽音だけが、静かな穏やかな世界で耳に届く。
私たちはその音に目を凝らしていた。
『…なんだぁ!?』
「お兄ちゃん、何か来るよ~?」
アランは私たちの元へ戻るとその一点を見つめ、焦った様子で珍しく険しい表情を作っていた。
「…三人とも、河から離れてて!?…ちぇっ、アイツが来やがった…」
「「…アイツ?」」
バサッ…バサッ…
そう近付いて来るものは、
『人』の形をしていた。
人、だけど人間ではない。
大きさは私たちのサイズより、遥かに大きい。
バサッ、バサバサッ…
「…――!?」
「…え!?お兄ちゃん!何、あの人っ!?」
『――…きゃあぁあぁあああぁッ!!何あれ何これッ!?俺コワイぃ~!俺ごあいーッ!!』
言葉も少なく近付いて来る大きな『存在』に私たちの視線は釘付けで。
コンちゃんだけが、見るのも怖いのか叫びながらハルカちゃんの胸へ飛び込みガタガタと震えていた。
それは、私には思い当たるものがあった。
頭には、長い角。
コンちゃんの薔薇の棘程の角とは比べ物にならない程に長く、くねくねと何回にも曲がりながら空へと続く。