記憶 ―惑星の黙示録―
口元には、牙。
その鋭利な凶器を煌めかせながら、不気味に笑みを浮かべている様にも取れた。
その視線の先には、
私たちを退かせ、
河辺の先頭に立つ…、
アラン。
…お、大きい…
河辺いっぱいまで近付いた『それ』は、アランの前で翼を羽ばたかせたまま宙に留まる。
肌の色は、赤褐色。
角、牙…
瞳からは生気が感じられない。
『それ』は…
「……鬼…?」
私は弱々しく、隣に居るハルカちゃんにしか聞こえない程の小さな声で呟いていた。
ハルカちゃんたちは瞳を大きく、私を見ながら『おに?』と口だけを動かす。
「もぅ。…どぉしたのさ~?鬼族の族長さんが自らやって来るなんてさ?」
アランは、普段と変わらず明るい声を出してそう聞いた。
『……迎エニ…来タ…』
その低い唸り声と、存在の威圧感に…
私たちは何も言葉を発せずに居た。
迎え…?
だ、誰を…?
『…迎エニ来タ…。行キ先ヲ無クシタ者ヲ、「力」ノ尽キル者ヲ…』
まるで、その声は地響きの様に揺れて私の体へ入って来る。
行き先を無くした者…?
力の、尽きる者?
…分からない。
だけど、
私…の事、なんじゃないか…
そう恐ろしくなって身を縮めた。