記憶 ―惑星の黙示録―


「ほら~女の子たちが怖がってるじゃ~ん?奈央、ハルカ。大丈夫だよ?」

アランはお互いに身を寄せ合う私たちを振り返って『ははは』と笑った。

何が大丈夫なのか分からない。
アランは私たちを安心させようと「笑って」いるんだから。
本当に「大丈夫」なのかは、私には分からなかった。


「…昨日奈央に言ったろ?俺、鬼さんたちとも友達だって。それに、鬼族は『ここ』から先へは進めない。」

アランはそう言って、自分の足元を指した。
河と陸地の、境目。


「…ここが、境界線。」


バサッ…バサッ…

鬼は、その境界線を越えない形でアランとの至近距離を保っていた。

とは言え、とても友達には見えないんだけど…

そこに在るのは、
アランの明るい態度だけでは緩和し切れていない緊迫感。


『…ソロソロ時ガ満チテイル。掟ニ従ウガイイ…』

「…ははは。掟に縛られた頑固者め。どうせお前はここを越えられない。俺たちは先へ進むよ?」

アランは相手を怒らせる様な言葉を浴びせたが、鬼の表情に全く変化はない。


『…我ハ此処デ待トウ。掟ニハ誰モ背ケナイ…。ジキニ時ハ来ル…』


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