記憶 ―惑星の黙示録―
「…ちっ。はいはーい。勝手にしたら~?ばいばーい?」
アランは鬼に背を向けて、片手を投げやりに振っていた。
鬼はやはり表情も変えず、じっとアランを見ていた。
「…掟に囚われた哀れな者。鬼さん達には『感情』がないから、何を言っても怒りゃしないよ?」
アランは私たちに近付くと草原を指差し、『早く行こう』と催促しながらそう言った。
鬼は、
誰の事を言っていたんだろう。
「…お兄ちゃん…、『掟』を、私たち破ってこの河を越えた…」
『…俺たちかッ!?』
……ぇ…?
「それに、この河からは私、『力を無くした』…。鬼さん、私たちを…?」
ハルカちゃんは私の袖をぎゅっと握りながら、青ざめてアランの顔を見ていた。
片手では胸元のコンちゃんを抱き締めて。
『…俺ッ、キースに会いたいだけだもんッ!俺たち、悪い子じゃないもんッ!!』
ハルカちゃんの手の中で、
コンちゃんは瞳を潤ませて鬼とアランを交互に見ていた。
私の事じゃない…?
どうしよう…
御免なさい、私が二人を連れていく様に頼んだから…
焦りと後悔で一杯で、私の顔からも血の気が引いていく。