記憶 ―惑星の黙示録―



人がひとり、

目の前で、消えた。


私たちに走った衝撃は、
何と表現したら正しいのか。

誰も言葉を発せず、

「アランが居た場所」を呆然と見ていた。
動けなかった。


消えそうだった。
…分かってた。
なのに、何も出来なかった。

また、「落ち着く」んだと…
またアランは「ごめんね」って笑うんだと、甘えていた。

だけど…
「また」は、もう無かった。

…消えた…



『……ぅぐ、ぇぐ…。アランが死んじゃったぁあぁぁ~!ぅわぁあぁぁん…』

コンちゃんの鳴き声。
それに誘導されるかの様に、
ハルカちゃんの瞳からも綺麗な涙が零れる。


「……お兄ちゃん…」

顔を覆い隠し、その場にぺたりと力無く座り込む。
皆、泣いていた。


私も、悲しかった。
泣きたかった。

でも泣けなかった…。

泣いちゃ、いけなかった。


アランは、
こうなる事を分かって…
私に話をしていたんだと、
そう思うから。


唇を噛み締めて、
拳を、ぎゅっと握る。

泣かない。
我慢…、我慢する…


涙を、飲み込んだ…。


私は、
「アランの居た場所」を、
見つめていた。


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