記憶 ―惑星の黙示録―


『…砂漠…』

とも呟いていた。

それは地理の時間。
ゴビ砂漠だったか、サハラ砂漠だったか…写真の付いた教科書を見つめて、
どこか遠くに想いがある様に。

その顔が真剣で、
切なそうに泣きそうだった事を覚えている。

ここに居ながら、
どこか遠くに想いがある。
時折見せるそんな悲しそうな表情に、心配と何も言ってくれない寂しさを感じていた。


愛里は、絵美のお兄ちゃんと付き合い出した。

高校時代のある夏休み。
私たちが居たカラオケに絵美の兄、梓さんが迎えに来てくれた時だった。


当時、未だ自分の感情に素直だった頃。

心の幼かった私は、年上で優しい梓さんに憧れを抱いていた。
しかし、それは恋愛感情とは違って、優しいお兄ちゃんに憧れる「ファン」てところ。


そんな中、
愛里の様子に変化が訪れた。


愛里と梓さん。

お互い初めて会ったにも関わらず、会うなり見つめ合って…、

言葉も少なく、
静かに涙を流して、

抱きしめ合って…



奥手の愛里が?
恋愛に興味の薄かった兄が?

突然の出来事に、
私と絵美が驚いて目を丸くし、顔を見合わせていた事を思い出す。


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