記憶 ―惑星の黙示録―


風にざわめく木々。
遥か昔の、古道の絵地図。


『仏教はよく分からないけど、そう考えたら素敵だね…』

黒い古文を見つめて、
愛里は目を細めていた。


『愛里が好きって事は、うちの兄も好きだろうね~、この内容…』

『ふふ…多分ね』


「…全く不思議な二人だよ。このまま結婚するんだろうね~?」

『あたし、愛里の義理のお姉様になるのね~…』

『未だ先の話でしょ!』


そう照れる愛里は幸せそうで、
私たちも幸せになった。



その二人が結婚する。
きっと、それはこの頃から分かっていた事。

いつかその時が来るって。

でも先は見えなくて、
この時は寂しくはなかった。


でも今は…



『よし、奈央!行くよ!』

『底無し沼ー!』

えいえいおー、と言わんばかりに元気良く二人は歩き出す。


「…やっぱり行くんだ…」

私はげっそりと顔を歪め、二人の後を歩き出した。


「だから、早いって!もっと、ゆっくり歩こうって!」

やっぱり、
足は鉛の様に重い。


『遅い!早く!』

『置いてっちゃうよ~?』

道の先で…、
そう私に笑顔を向けながら、それでもその足は止めてはくれない。


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