記憶 ―惑星の黙示録―
…心地良い。
未だ、眠っていたいのに…
そっと私を包み込むのは、
ふわりふわりと、
…花の匂い。
「…オちゃん…、ナオちゃん!」
瞳を開けると、
涙を溜めたハルカちゃんが橙色の花たちの中に居た。
「……ぁ…」
「大丈夫!?花畑へ入るなり急に倒れたんだよ。分かる?」
ここは、
きっと…あの続き。
ハルカちゃんが上から私を覗き込み、その背後には青く澄み渡った空。
花畑…?
辿り着いたんだ…
穏やかな風に吹かれて、
私たちの周囲で橙色の花たちが揺れていた。
「…うん…」
私は寝そべったまま自分の手を動かし、体を確認した。
やはり、
その手は風景を通すまま。
透けて見えていた。
体は…、軽い。
私は感覚を確かめる様に、ゆっくりと身を起こす。
ワンッ!
『――ナオぉおぉ!消えちゃうかと思ったぁあぁ…あぁぁ…』
ハルカちゃんの隣には、黒い犬竜コンちゃんの姿。
あ…
コンちゃんの言葉が…
「――コンちゃんの言葉が!…ハルカちゃんたちは大丈夫なの!?苦しくない!?」
そうよ。
さっきまでは苦しそうに歩くのもやっとだったんだから、私を心配している場合じゃないのに…