記憶 ―惑星の黙示録―
「普段は分からねぇ様に…、皆が気付かねぇ様にしてんだ。…ハルカちゃんたちが居た「夜の世界」は、どんな世界だ?説明してごらん?」
ハルカちゃんは一瞬きょとんとして、首を傾げながら話し出した。
「…妖精と精霊が棲んでいて、そこは迷いの森に囲まれていて…。森の向こうには、人間も住んでるよ?」
ハルカちゃんの答えに、リュウさんはまるで学校の先生の様な態度をとった。
「…そうだな。空はいつも暗く昼は訪れねぇし、16個の月がある。植物は自ら、光を放つ。奈央ちゃんは知らねぇ世界だな?」
「…はい…」
でも、この言い方は…
やっぱり存在するんだ。
「じゃあ、奈央ちゃん。自分の世界を説明してごらん?」
リュウさんは、
私にそう微笑んだ。
私の世界…
私が当たり前だと思っていた世界は…
「…コンクリートのビル、人々の暮らす家が建ち並んだ緑の少ない世界…。魔法なんて、魔術なんて…使えないし。」
良いところを言おうとすればする程出てこない。
ゴミは沢山だし、
海は汚くて入りたくないし。
良いところ、無くない?
「魔法、ないの…?」
ハルカちゃんがそう聞いたから、私の返答する声が小さくなる。