記憶 ―惑星の黙示録―


そんな私を、
やっぱり彼は知っていて、
言わなくても良いのにそれを口に出した。


「…奈央の背中が寂しそうだったからさ、抱き締めて欲しいかな~と思って?」

そう言って力を込めるアランに、私は何も言えなかった。

私…
まるで子供みたいね?


「泣いても良いんだよ、奈央?」

「…泣かないわよ…」

今まで通りの私の強がりに、彼は笑いを溢す。

気が付けば、
涙は乾いていた。


「ごめんね…俺が消えたばっかりに、辛い想いさせて。でも、皆を花畑へ連れてきてくれて有り難う…」

お陰で二人とも無事だった。
そう言うアランに私は静かに首を振る。

私たちこそ、
無理させてて御免ね…


アランは後ろから私を抱き締めたまま、少しだけ間を置いてから話し出す。


「…本当は、奈央を迎えに行くのはリュウだった。この世界を案内するのは、リュウの仕事なんだ…」

「…え?」

初めて逢った時の事を思い出した。

アランは子供の姿で、
『リュウ』と名乗っていた。


「…奈央がこの世界に来て、俺はどうしても奈央に逢っておきたかったから…リュウが来る前に、俺がさらった。」

さらった…?


< 181 / 262 >

この作品をシェア

pagetop