記憶 ―惑星の黙示録―
「…着いたよ、ここだ。」
アランが足を止めたのは、花畑の中の小さな池の前だった。
「…池?これが、何?」
小さな池。
その水はとても清んで透明で、周囲の花たちをその水面に映し出していた。
普通の池に見えるけど、
ここで私の「普通」なんて通用しない事は分かっていたから、アランの顔を覗いて返答を待っていた。
「…この池は、世界を映す池。触れた者の想い出を映したり、心残りを映したりする…」
俺は、
この池で奈央を見てた。
アランはそう言って、
悲しそうに私に笑いかけた。
私、を…?
アランはその池の傍に座り込みながら、私の手を引いて横へと導いた。
「正確には…俺が想いを残す者の傍に、…いつも、奈央が居た…」
「…え…?」
アランはその指先で、
水面へそっと優しく触れた。
ピチャン…
そう水面が揺れて…
幾つものここに無い色を映し始めていた。
まるで…
私の半透明の体が、その池に吸い込まれる様に…
意識を引っ張られる様に、
気が付けば…
池の中の光景だけを、
私は感じていた。