記憶 ―惑星の黙示録―
その二人が視線を移す。
視線の先には…
崩れた古い壁、
小さな花壇の花たち…
そして、
――ひとつの、墓石。
夕日の朱が眩しくて…、
私は眉をひそめて、その見慣れない光景を必死に目で追っていた。
墓石が誰の物なのか、私には分からない。
しかし、
繋いだ手を通してか…
横に居るアランの感情が私に入って来るかの様で、深い悲しみに囚われていった。
――…俺たちは、誓ったんだ。
あいつらを好きだった…
大切だった…
失いたくはなかった…――
これは…、
アランの砂漠での「想い出」?
失った…?
目の前の光景が徐々にぶれて、映像をかき消す。
再び瞳に色が戻ると、
そこは馴染みのある見慣れた光景が映っていた。
大きなテレビ画面。
ひとつのテーブルを囲んだ長椅子が二つ…。
殺風景な家具が並ぶ、小さな閉鎖的なその部屋は…
昔よく訪れていたカラオケボックス。
笑い合う女の子が、三人…
あれは…
いつかの私たち。
私の想い出?
そう思ったのも束の間。
アランの心が、愛里を捕らえて和らぐのを感じた。
――アイリ、アイリ…
俺はここで見てるのに、
俺に気付いて…
気付いてよ…――